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「大阪府・山田眞佐美様」から投稿頂きました。

 

いつものようにマンションに戻り、ポストにあった葉書を手に、エレベータに乗り8階で降りました。

見慣れた景色を見ながら、我が家目指して進んでいると、一つの物体が目に入りました。嫌な予感と共に近づきます。やっぱり、蝉!よく見ると、仰向けで幾つかの足が動いているではありませんか。

どういうわけか幼い頃より昆虫が苦手、いや、怖いのです。この時期、蝉の亡骸をよく目にします。情けない話なのですが、いつも半泣きで通り過ぎているのです。でも、今はまだ生きています。弱々しくもがく姿が人間の哀れさと重なって見えました。

しばらく立ちすくんでいましたが、反対になればまだ動けるのかも、そう思い、恐る恐る手を伸ばしました。こちらの気配を感じたように「ジジジ」と独特の羽音をさせます。思わず身震い!持っていた葉書の端でなんとかひっくり返しました。

蝉は暫くじっとしていましたが、羽を震わせ宙に浮き、飛んだかと思うと隣の家のドアにぶち当たり、また、よろよろ飛んで螺旋階段の壁に当たる音がして姿が消えました。私にしたら身の毛もよだつ光景です。

恐る恐る見に行くと、今度は、ひっくり返ってはいませんでした。少しの間見ていましたが、「蝉さん、さよなら」と言い背を向けました。その瞬間です。力強い羽音と共に私の横を通って、空を飛び消えていったのです。

「うわっ」と声を上げ、私は手を叩いていました。暑い夏の午後の出来事です。手にしていた葉書には議員の顔が大きく載っていました。「役にたったじゃん」私は葉書に向かってそうつぶやきました。