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魔法のりんご

「広島県・アップル様」から投稿頂きました。

私が新入社員だった頃の話です。

配属になったのが、全然土地勘のない名古屋の本社でした。しかも、初めての仕事が営業ということで、大きな壁にぶち当たっていました。

今考えると、仕事は会社から与えられているという意識で、いやいや仕事をし文句ばっかり言っていたように思います。そんな意識で仕事をしているものですから、当然成績も伸び悩み、そのまま大切な秋の商戦シーズンに突入していったのです。

その頃には、営業に向いてないと考え、転属願いを出すか、それが受け入れられなければ辞めて地元に帰ろうかと真剣に悩んでいました。

そんな時、ある展示会がありました。

お客様が引き換え券をお持ちになり、後日長野から送ってきたりんごを1つお届けするように言われました。私は、「りんご1つ数百円で買えるのに、1つだけお送りするなんて、会社ってケチですね」って仲の良かった先輩に話しました。その先輩は、「このりんごがただのりんごにもなるし、魔法のりんごにもなるんだよ、よく考えてごらん」と言いました。

『魔法のりんご?』
最初は、先輩の言ってくれた事が全く分かりませんでした。

よく調べてみると、そのりんごは、会社がりんごの樹のオーナーになり、大切なお客様の為に用意したものである事が分かったのです。

ちょうど松本に出張に行く機会があり、駅前でりんごを1つ買って食べてみました。産地のりんごは蜜がいっぱい入っていて、私が今まで食べたことのあるりんごとは全く違っていました。やがて会社にりんごが届き、私の大切なお客様に一軒一軒りんごを届けていきました。

するとどうでしょう、たった1つのりんごが先輩の言っていた『魔法のりんご』になってくれたんです!りんごを通して会社のお客様に対する熱い思いを感じ、いつしか、私のお客様への思い、そして仕事への思いも変わっていったのです。

今では地元に帰り、小さなお店のオーナーをしていますが、この時期になると『魔法のりんご』のことを思い出し、感謝しています。