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左遷の果てに待ち受けていた事・・・

「広島県・かおり様」から投稿頂きました。

10年ほど前の話です。その頃私は、管理職のキャリアウーマンとして日々忙しい毎日を送っていました。

そんなある日、私は業績不振を理由に、突然九州の外れのある県へ左遷されました。悔しさと、腹立たしさと、情けなさで、胸が張り裂けそうな思いで空港に降り立ちました。

始業まで時間をやり過ごした喫茶店。コーヒーを持ってきてくれたオーナーさんは初めて接する土地の人です。土地も憎し、人も憎し、で、ここぞとばかり、彼に私は次々と酷い言葉を浴びせかけました。

「来るはずじゃなかったんです、この県なんて。」
「今私はこんな場所にいるけれど、本当は本社の人間だったんですよ。」
「すぐにでも帰りたいです。絶対に帰ります。もうごめんです。」

静かに聞いて下さっていたオーナーさんは一言だけ私に言いました。
「・・・でもね、ここをあなたが去る時、きっと名残惜しい思いでいると思いますよ」

それから毎日汗水流して働きました。本社に帰りたい一心で。そうするうちに、一人、また一人と仲良くなるお客様達。私の口から時折出る、遠い場所の方言に笑い転げられ、そして素朴な彼らの身近な出来事の笑い話、悲しい話に聞き入り、地元の名物に舌鼓を打ったり、いつしか私は、親切な地元の人達の中で生活している事が楽しくて仕方なくなっていました。

そして3ヵ月後、本社へ栄転で戻る辞令を受けました。その時です。その地を離れたくなくて、寂しくて、心で涙している自分に気づいたのです。どうしてわずか3ヶ月なんだろう、もっといたい・・。

空港への行きがけに、例の喫茶店に寄りました。オーナーは生憎留守でしたが、名刺の裏に、3ヶ月前の非礼の詫びと御礼をしたため、渡していただくようお願いしました。機内で、眼下に小さく見える街を眺めながら、私はあふれ出る涙を止める事が出来ませんでした。オーナーさん、地元の人達、そしてあの県に、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。