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私は今日も・・・

「兵庫県・樋口光子様」から投稿頂きました。

ビスケット一枚を牛乳で無理に胃の中に落とし込み、JR須磨駅への1分を争って急ぐ。

カツ・カツ・カツ・・・・・。
早朝の住宅地に響く私のヒステリックな靴音。そう、これが毎朝、大阪の会社へ出勤する私です。

いつの頃からでしょう。関守稲荷神社の鳥居の前まで来ると、必ずすれ違う「おばちゃん」がいました。(この私も十分おばちゃんではあるのですが)必ず同じ時間、同じ場所。

その朝は最悪なコンディション。バッグを替えた為に通勤定期を忘れてしまったのです。
「どうしよう、取りに帰る?でも、もうここまで来てしまった。遅刻はカッコ悪い。でも須磨から肥後橋の会社までは片道890円もかかる!往復で2,000円近くも・・・。」
自分で自分をののしりながら、結局、家へはUターンせずに駅へと私は急ぎました。

私はその時、どんな顔だったのでしょう?不機嫌に歪んでいたかもしれません。そんな最悪な時に、「おばちゃん」は私の真ん前に立ちはだかったのです。???の私。


「あのね、私、宮崎と言いますねワ。毎朝ね、お会いしますやろ。私、今日から『おはようございます』と言いますワ。よろしやろか」おばちゃんは、私にそう宣言しました。私は咄嗟に言われて、うろたえ、「えっ、はぁ、ありがとうございます。私こそ気が利かず。。。」としどろもどろで数秒の立ち話をしました。

翌日から私達は毎朝すれ違いざまに、「おはようございます」「今日は良い天気になりましたね」「気いつけて行ってらっしゃい」と挨拶を交わすようになり、季節は移って行きました。

そんなある日、またしてもおばちゃんは私の前に立ちはだかりました。
「おおきに、有り難うさんでした。9月5日が誕生日でね、定年ですねん。私ね、この上の老人ホームの職員でしたんよ。毎朝、おたくが出勤する姿に出会うのが楽しみでしたわ」と言ってくれました。

しかし、私は恥ずかしい、とても恥ずかしい!なぜなら、いつも私は会社の仲間や同業の仕事仲間に見せる姿とは裏腹に、胸の中に黒い雲を広げ、何かイライラしながら攻撃的な態度で、朝の道を急いでいたと思うからです。おばちゃんは、そんな私をしっかり見ていたのです。
「気持ち良く仕事に行きなさいね」といつも私に信号を送ってくれていた、そんな気がします。

「ありがとう、宮崎のおばちゃん」

定年で職場を去られて今は、ひょっとして可愛いお孫さんの相手でもされているのでしょうか。もし、この話を読まれたら私を思い出して下さい。今日も元気を出して大阪へ出勤しています。あの挨拶を交わし合うようになってから、私も少し心のゆとりが出て、風のにおいや道端の花を感じ取ることも出来るようになりました。


どうぞお元気でいて下さい。