シロ 2003.11.20 「神奈川県・東條様」から投稿頂きました。 私が小学校1年生の時の話です。私が生まれてすぐに父は他界したので、母は仕事帰りにいつも児童館で遊んでいる私を迎えに来てくれ、そして家まで一緒に帰る日々を送っていました。当時私は小食でしたので、給食に出されるパンを食べきれず、いつも半分以上残して家に持ち帰っていました。帰り道の途中に「シロ」という大きい犬を飼っている家があり、いつからか、母に抱っこされて高い柵の隙間から残したパンを「シロ」に差し出すようになりました。「シロ」は差し出したパンをムシャムシャと食べてくれました。当時の私よりも随分大きい犬でしたので、動物に慣れていない私は、いつか噛まれるのではないかと恐怖に怯えながらパンを食べてもらっていました。 ある日の夕方、帰り道にある公園に母の知り合いがいたらしく、手を引かれて中に入りました。もう薄暗くなった公園に白く大きい犬が元気良く走り回っている姿が見えました。そこは「シロ」の家の近くの公園で、ちょうど散歩をしていたのです。「シロ」はすぐに私を発見し、口を開けて全速力でこっちへ向かってきます。私は身の危険を感じ、恐くて一歩も身動きできず、その場に立ち尽くすばかりでした。しかし、「シロ」は前足で私に寄りかかり、私の顔をぺロぺロなめてくれました。私は緊張のあまり何もできず、その後の記憶が全くありません。その出来事があった後も、しばらくパンをあげ続けたのですが、いつからか「シロ」の姿が見えなくなり、犬小屋だけが寂しく残されていました。あの時、何もできなかったけど、本当はとてもうれしかったんです。きっと「シロ」は友達だと思っていてくれたんだ。もう一度「シロ」にあって今度は自分の気持ちを伝えたい。そして公園で思いっきり走り回りたい。私は相変わらず動物になれることができませんが、今でもふと「シロ」のことを思い出すと暖かい気持ちでいっぱいになります。