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「三重県・坂口広信様」から投稿頂きました。

7、8年前の出来事です。当時、私は、亀山鉄道部に勤務していました。

ある当直の日、帰り支度をしていたところ(18:20頃)、「線間で犬が横たわっています。生きています」との無線連絡が入りました。
犬を助けに行こうと思い、見張り要員も必要なのと、線間では足場も悪く一人では抱えきれないだろうという事もあり、上司にお願いし一緒に現場に急ぎました。

既に日は沈んでいました。真っ暗の中を進んでいると、懐中電灯の光の先にうずくまっている犬を発見!まだ成犬にはなっていない、猟犬らしき犬です。

犬の気を荒立てないよう話かけながら近付くと、右のお尻の辺りを強打したようで血が滲んおり、立つことも出来ない様子でした。
持っていったタオルで包みカゴに入れ、動物病院に直行。応急処置をしてもらって、家に連れて帰りました。

休日には、現場付近の農家や畑仕事をしている人に聞き回りましたが、飼い主が分かりません。保健所にも問い合わせがないか尋ねましたが、ありません。
私も妻も平日は仕事で家にはおらず、足の悪い母がごはんをあげてくれるものの、このままにしておく訳にもいかず、途方に暮れていました。結局、保健所に相談し預かってもらう事にしました。

一週間程して妻から、「犬にも人権(犬権?)があるんですよ。足が不自由でも散歩は一輪車に乗せて連れっていったらいいし、暖かい所に寝そべったままにしておいてもいいじゃないですか。うちで預かりましょうよ」と言われ、犬の事が気になっていた私も賛成し、引き取ることにしました。

数日後、同僚が「駅の待合い室にポスターを貼ったらどうか」と提案してくれ、ご主人を捜してあげる事が一番だと思い、貼ることにしました。
それから更に数日たった時、ご主人様が見つかり、迎えに来てくれることになりました。ご主人様も、ずっと捜していたそうです。
ご主人様が見つかった嬉しさはもちろんあるものの、犬と別れる辛い気持ちが強くなっていました。

そしてとうとう、お迎えの日がやってきました。ご主人様の声が聞こえ久しぶりに顔を見た瞬間、信じられない出来事がおこりました!!

どうしても立つことの出来なかった犬が、倒れそうになりながらフラフラと立ち上がり、「ワン!」と鳴いたのです。「僕は元気ですよ」と言わんばかりに。

何とか立ち上がったものの、右のお尻と足はガクガク震え、もう倒れそうです。私はその姿に感動し涙が止まらず、「よくやった、よくやった。もういい、もういい・・・」と言いながら、足を撫でてやりました。それ以上、言葉が出て来ませんでした。

帰り際、犬の目は、私達をずっと見つめていました。「ありがとう・・・」と言っているのが分かりました。

それから数日後、犬が天国に行ったと知らせがありました。ご主人様の傍に戻れて良かったと、つくづく思いました。
今思えば、震えながら奇跡のように立ち上がったのは、ご主人様に最後の敬意を表したのでしょう。
今は、天国で走り回っていることでしょうね。

あの子に、かけがえのないものを教えられた気がします。